はじめに
紫外線は、日焼けやシミなど人体への影響が懸念される一方、適度に浴びることで健康作用を得られたり、産業分野では殺菌、火炎検出などの用途に広く活用されています。今回、紫外線センサー ML8511 (LAPISセミコンダクタ社)を使って、紫外線の強さをUVインデックスで表示する簡易UVチェッカーを作製しました。
概要
ML8511は、紫外線(UV光)をLSI内部のフォトダイオードで受光し、光強度に依存した光電流をアナログ電圧に変換して出力します。アナログ電圧出力なのでADCとの接続が容易です。
左下はML8511の出力電圧 – 光強度特性です。直線性に優れています。
右下は分光感度特性です。波長365nmに最大感度を持つ紫外線UV-AおよびUV-B(次項参照)に対する光センサです。
紫外線について
紫外線(UltraViolet:UV)は、波長が太陽光の可視光線より短い100~400nmの不可視光線の電磁波です。紫外線は、波長の長い方からUV-A(320~400nm), UV-B(280~320nm), UV-C(100~280nm)に大別されます。
UVインデックスについて
UVインデックスとは、紫外線の強さが人体に及ぼす影響の度合いを分かりやすく示すため、世界保健機関(WHO)が策定した指標です。人体に及ぼす影響は、紫外線の波長によって異なります。UVインデックスは、紫外線の波長毎の人体への影響度合いを総合的に評価した指標であり、使いやすい数値(0 ~ 11+)で表されます。下表は、環境省「紫外線環境保健マニュアル」のUVインデックスの内容です。
UVインデックスは定義式がありますが、その計算は8ビットマイコンでは手に余ります。そこで、説明書に記載されていたセンサー出力電圧 – UV強度 – UVインデックスの関係図(左下)を参考に、出力電圧とUVインデックスの関係式(右下)を求めました。大雑把ですが、ホビーなので良しとします。
方法
マイコンは、オペアンプモジュール内蔵のPIC16F1705を選択しました。オペアンプをボルテージ・フォロワに使用するためです。説明書(使用例)には、マイコンやADCなどを使う場合はオペアンプでバッファリングすることを推奨しています。バッファリングとはボルテージ・フォロワのことで、オペアンプの反転入力端子(-)と出力をショートして使います。なお、PIC16F1705はボルテージ・フォロワをレジスタからマイコン内部で設定できます。
信号源(センサーなど)の出力電圧を正しく負荷(マイコンなど)に入力するには、信号源の出力インピーダンスより負荷側の入力インピーダンスを十分高くする必要があります。ボルテージ・フォロワは増幅率が1倍で、入力インピーダンスが非常に高い(100MΩ前後)という特徴があります。そのため、負荷の前段にボルテージ・フォロワを入れることで、負荷側のインピーダンスの影響を無視することができます。このような使い方を一般にバッファと呼びます。
このUVチェッカーの信号の流れは、UVセンサーが出力したアナログ信号電圧をバッファを介してPICマイコン内蔵のADCでデジタル値(10ビット)に変換後、UVインデックスに換算してメッセージと併せて液晶表示器に出力します。
結果
ブレッドボードに回路を組んで実験しました。電源電圧は3[V]です。ML8511は、DIP化モジュール品(秋月電子通商)を使用。液晶表示器にUVインデックスとメッセージを表示します。
8月快晴の日中にUVインデックスをチェックしてみました。日向でUVインデックス「6」を示しました(下写真)。短時間でもジリジリと肌を刺すように感じました。一方、日陰はUVインデックス「0」なので、紫外線のみ検出していることが分かります。使った感じは指向性が強いセンサーで、太陽光に垂直に向けないと最大感度が得られにくいようです。
まとめ
紫外線は、波長によって人体に及ぼす影響度合いが異なること、その影響度合いを評価する指標として、UVインデックスが定義されていることが分かりました。この簡易UVチェッカーは、そこそこ役に立ちそうなので、持ち運びできるようブレッドボードからユニバーサル基板に移植してモビリティー化(下写真)しました。
以上