タイマーIC 555の実験

はじめに

555は、1972年発売の超ロングセラーICで、多くのセカンドソース製があり、最も有名なICとも言われています。僅かな外付け抵抗とコンデンサーだけで動作するタイマーICです。ここでは、555を使った単安定マルチバイブレータと、無安定マルチバイブレータを実験します。

概要

下は、555の内部等価回路の簡略図です。RS-FF(Reset Set-Flip Flop)がベースになっていることが分かります。RS-FFは、RとSの状態が変化しない限り、/Qはその状態を保持(メモリー)します。

ThresholdとTriggerが入力、Outputが出力です。
ThresholdはComparator-AからRS-FFのRに、TriggerはComparator-BからRS-FFのSにつながります。また、RS-FFの/Qは放電FETと連動し、Inverterは/Qを論理反転してOutputに出力します。
Comparatorは、ThresholdとTriggerの入力電圧を、内部抵抗で分圧したVccと比較します。内部抵抗は3つとも同じなので、a点は2/3Vcc、b点は1/3Vccです。このとき、ThresholdとR、TriggerとSの状態は次のようになります。
  Threshold > 2/3Vcc なら R=1
  Trigger < 1/3Vcc なら S=1


下はRS-FFの真理値表です。

従って、555の入力と出力は次のようになります。

単安定マルチバイブレータ動作のしくみ

単安定マルチバイブレータは、入力信号を検知すると出力が一定時間Hiになる回路で、ワンショット回路とも言われます。下の回路図で説明します。

SW1を一瞬ONにすると、Trigger < 1/3Vcc になるのでSは1です。同時にC1は充電開始。この時点はThreshold < 2/3Vcc なのでRは0です。結果、/Qは0で充電FETはOFF、OutputはHiになり、LEDが点灯します。
OutputがHiの状態はC1の充電時間、即ちR1とC1の時定数によります。R1大、C1大ほど充電時間は長くなり、その間Hiが維持されます。Output(Hi)の時間:t[sec]と、R1[Ω],C1[F]は次式の関係があります。

SW1がOFFになると、Trigger > 1/3Vcc となりSは0です。C1の充電が完了し、Threshold > 2/3Vcc になるとRは1になります。結果、/Qは1で充電FETはONになり、C1は放電します。OutputはLoになり、LEDは消灯します。
下は、SW1のTrigger信号に対するR1:10kΩ, C1:47uFのOutput波形です。t(Output:Hi)は524msecで、凡そ計算値(517msec)どおりです。

無安定マルチバイブレータ動作のしくみ

無安定マルチバイブレータは、入力信号なしで出力がHiとLoを繰り返す発振回路です。下の回路図で説明します。

Trigger < 1/3Vcc なのでSは1、Threshold < 2/3Vcc なのでRは0。同時にC1は充電開始。結果、/Qは0で充電FETはOFF、OutputはHiになり、LED2が点灯し、LED1は消灯。
OutputがHiの状態は、C1の充電時間、即ちR1,R2とC1の時定数によります。R1大、R2大、C1大ほど充電時間は長くなり、その間Hiが維持されます。

C1の充電が完了すると、Trigger > 1/3Vcc になりSは0、Threshold > 2/3Vcc になりRは1。結果、/Qは1で充電FETがONになり、C1は放電。LoになったOutputに向かって吸い込み電流が流れ、LED1が点灯、LED2は消灯。
OutputがLoの状態はC1の放電時間、即ちR2とC1の時定数によります。R2大、C1大ほど放電時間は長くなり、その間Loが維持されます。
C1の放電が完了すると、TriggerとThresholdは再びLoになり、先の状態に戻ってOutputはHiとLoを繰り返します。Hi, Loの各周期 tH, tL[sec]は、R1,R2[Ω],C1[F]と次式の関係があります。

従って、周期:T[sec]は次式となります。周波数は周期の逆数です。

また、デューティは次式になります。

下は、R1=1kΩ, R2=220kΩ, C1=0.01uFのOutput波形です(Duty≒50%)。Tは3.12msecで、凡そ計算値(3.06msec)どおりです。

結果

下の回路図のように、CdSセルを入力側に挿入した単安定と無安定マルチバイブレータを実験しました。CdSは、硫化カドミウムを使用した光センサーで、明るいほど電気抵抗が小さくなる特性があります。

CdSに手をかざして暗くすると、単安定マルチバイブレータではLEDがしばらく点灯し、無安定マルチバイブレータではLED1とLED2の点灯周期が長くなります。(動画はここ)

まとめ

555内部を簡略等価回路で見える化することで、ThresholdとTriggerに対するOutputの関係がイメージしやすくなります。マルチバイブレータ以外にも、センサーなど様々なデバイスと組み合わせた応用例が書籍やインターネットに数多く紹介されていますので、いろいろ試してみてはいかがでしょうか。

– 以上 –