ゲルマニウム・ラジオの実験と作製

はじめに

AMラジオの原点と言えるゲルマニウム・ラジオの仕組みを実験をとおして作製しました。(2011年)

AM波について

放送局から送信されるAM波は、高周波(搬送波)を低周波(信号波)で振幅変調(Amplitude Modulation)したものです。低周波は、地表近くを進むため遠くまで届きません。高周波は、上空の電離層に反射・伝播し遠くまで届きます。放送局は、高周波信号に低周波を乗せて(AM変調して)送信します。AM放送の周波数〇〇〇kHzは、高周波の周波数を指します。

仕組み

ゲルマニウム・ラジオ(以下ゲルマラジオ)は、電源や増幅回路を持たず、受信した電波の強度のみでセラミック・イヤホンを鳴らす極めてシンプルなラジオです。同調回路で受信した電波をゲルマニウム・ダイオードで検波し、コンデンサーで高周波を取り除いて信号波を取り出します。これを復調といいます。

同調回路

電波の搬送波周波数と同調(共振)させる役割。並列につないだコイル:Lと、コンデンサー:Cの間に発生するLC発振の固有周波数:f0を、電波の周波数に同調させます。同調には一般的に容量を可変できるバリアブル・コンデンサー:VC(バリコン)が使われます。

実際のLC発振の様子を下の回路で観察した結果です。おおよそ計算値の周波数の発振が確認できます。

検波回路

同調回路で受信した変調信号をダイオードで整流する役割。抵抗はダイオードの負荷、出力段のコンデンサで高周波を除去し、低周波(信号波)を出力します。

下は、AM変調回路(Appendix参照)からの電波を受信したゲルマラジオ各段の波形を観察したものです。

検波ダイオードの順方向特性

下は、各種ダイオードの順方向特性(順方向電圧と順電流の関係)を示したものです。(インターネットより)

順方向電圧は、ダイオードに順電流が流れ出す電圧のことで、検波信号の電圧降下として現れます(下イメージ)。ゲルマラジオは電源や増幅回路を持たないため、信号損失が小さい、即ち順方向電圧が小さいダイオードが適しています。

例えば、ゲルマニウム・ダイオード 1N60の順方向電圧は約0.2Vで、他のダイオードより比較的小さいことが分かります。実際に、色々なダイオードを試してみるのも面白いと思います。

ゲルマラジオの作製

同調回路の理解を深める意味で、コイルを自作しました。なお、LCRメーターがあるとインダクタンスを測定できるので精度が上がります。コイルのインダクタンスは330 uHとしました。市販のポリバリコン(20~260 pF)と組み合わせると、受信周波数は543 kHz~1.96 MHzとなり、中波ラジオ放送の周波数帯域526 kHz~1.6 MHzをほぼカバーできます。また、コイルのインダクタンス:Lは、次式から求められます。

コイルの芯には、トイレット・ペーパーの芯(Φ42 mm)を流用。ワイヤーは、手持ちのポリウレタン銅線(Φ0.29 mm)を使用。この条件で、上記式からコイル巻数を求めると94巻、長さにして約12.5 mです。ワイヤーをコイルの芯に隙間や緩みが無いよう丁寧に巻いていきます。途中で継ぎ足しは不可です。巻数分を巻いたらLCRメーターでインダクタンスを測定し、巻数を調整します。最後に、コイルの緩み防止のため、上からニスを塗って完成です。下は、作製したゲルマラジオと、その回路図です。

感想

以前住んでいた東京・青梅市近郊では、このゲルマラジオでNHKラジオ第1(東京594kHz)と、NHKラジオ第2(東京693kHz)を受信できました。イヤホンから放送が聴こえると、様々な電波が飛び交っていることを実感します。また、電波の強度だけでラジオが鳴ることにつくづく驚かされます。住んでいる地域や環境で受信感度は大きく左右されますが、アンテナを工夫するなどして小さな音が聴こえた時の感動が味わえるのもゲルマラジオの醍醐味です。

以上

Appendix

下は、受信波形観察に使ったAM変調回路です。高周波455 kHzを低周波1 kHzで変調します。

各回路の波形です。